03/27/2025

スピードとパワーを生かしたやり投げで世界の舞台へ
– 上田百寧さん

INDEX

目指すは世界陸上3大会連続出場

東京2025世界陸上で注目を集める競技の一つ、女子やり投げ。パリ2024オリンピック競技大会で金メダルを獲得した北口榛花さんを筆頭に好選手がそろう中、3大会連続出場に期待がかかるのが上田百寧さんです。160cmと小柄ながら助走の速さを生かした投てきが持ち味で、パリ2024大会では10位。オレゴン2022世界陸上、ブダペスト2023世界陸上に続き、世界陸上3大会連続出場を狙う上田さんに、競技の魅力や大会に向けての意気込みなどを伺いました。

中学3年で出会った投てき競技

幼い頃から運動が得意だったそうですね。陸上競技に興味を持ったのはいつ頃なのでしょうか。
「物心つくかつかないかくらいの頃から走るのが速く、保育園の先生の間でも話題になっていたそうです。小学生の時はドッジボールで全国大会にも行きました。自分としては走ることが好きで、短距離走の選手を目指し、中学校では陸上部に入部したのですが、思うように記録が伸びなくて。全国大会にも手が届かず、自信を無くしているときに参加したのが福岡県主催のタレント発掘事業。そこで投てきに向いているのではというアドバイスを頂き、中学3年の時にジャベリックスローを始めました。」

やり投げの導入として中学生の大会で採用されているジャベリックスロー。実際に投げてみた印象はいかがでしたか。
「軽い気持ちでやってみたら、意外に飛んで。とんとん拍子でジュニアオリンピックに出場することになりました。結果は全国3位。短距離では行けなかった全国大会に出場でき、しかも想像以上の記録も出せたことに周りも自分もびっくり。この競技に可能性を感じずにはいられませんでした。」

唯一無二のスタイルを極めるのが醍醐味

高校生の時から本格的にやり投げを始め、大学ではその実力が開花します。ご自身としては、やり投げという種目のどんなところに魅力を感じていますか。
「トラック競技だったら早くゴールした人が勝ち。やり投げだったら一番遠くまでやりを投げた人が勝ち。と、陸上競技はルールがとてもシンプル。ただし、どうやったら速く走れるかとか、遠くまで投げられるかということに正解はありません。実際にやり投げの試合を見ていただくと分かるのですが、選手それぞれ、助走の距離、スピード感、投げ方が違います。誰かのまねをするのではなく、自分の力を生かした方法を考え、見いだし、極めていく。そこにやり投げという競技の魅力や競技者としての醍醐味を感じます。」

助走の速さを生かした投てきが上田さんの特徴でもありますね。
「私の場合、160cmという身長の低さがどうしてもハンデになってしまいます。そのハンデをどうカバーするかが一番の課題でした。記録が伸びる大きなきっかけとなったのが福岡大学の野口安忠監督の存在です。監督のアドバイスで助走の見直しをし、スピードを生かすことでやりの初速を上げ、ウエイトトレーニングを強化して筋力を高めることで、記録が伸びていきました。」
実際、大学3年のときの日本学生陸上競技対校選手権大会(インカレ)で初の全国1位。翌年には自己ベストを記録するなど、努力がしっかりと実を結んでいます。
「スピードとパワーを生かした自分らしい投げ方ができて距離が伸びたときは本当に気持ちがよくて。飛距離が60mを超えると会場がどよめくんですよね。その時の気分は最高です。」

国際大会のすごみを実感した世界陸上

世界陸上はこれまで2022年、2023年の大会に出場されました。印象に残っている出来事についてお聞かせください。
「私にとって、初めての国際大会がオレゴン2022世界陸上でした。日本代表に選ばれたことがとにかくうれしくて、なんとか期待に応えたいと、気合いも入りました。忘れもしない開催地に向けて出発する3日前。福岡大学のグランドで最終調整をしていた際に、つい助走のスピードを上げすぎて、転倒してしまったんです。その瞬間に、これは絶対にまずいやつだと思いました。案の定、左膝の前十字靱帯を部分断裂。悩んだものの、そのままオレゴンへ。結果、初めての世界選手権を靭帯断裂のまま出場し、予選落ち。思うように投げられない悔しさはあったものの、フィールドで目の当たりにした“世界”は強く心に残りました。会場中に響き渡る歓声、海外選手の様子、国際大会のレベル。それらを肌で感じたことで、ベストな状態で再び世界の舞台に立つことを心に誓いました。」

その言葉通り、帰国後すぐに手術を受けて復帰し、ブタペスト2023世界陸上に出場。そしてパリ2024大会で初のオリンピック出場を果たします。
「東京2020オリンピック競技大会の際には、代表入りの条件にわずかに足りず、出場がかなわなかったんです。それが悔しくて、悔しくて。次のパリ2024大会こそはと3年間、必死で練習に取り組んだ結果の代表入りでした。2回出場した世界陸上では結果が残せなかったこともあり、国際大会としては、まさに3度目の正直で挑んだハレの舞台。ただ、オリンピックはさらに規模がすごかった。上段までびっしりと観客がいるスタジアムに降り立っただけで、心が震えました。」

満員の観客の中で、堂々とした投てきで決勝に進出。素晴らしい活躍でした。
「2度の世界陸上の経験から、会場に入ってからは特に冷静さを心掛け、“練習してきたことをやる”に集中しました。結果は10位。決勝進出といううれしさはもちろんありましたが、目標は入賞となる8位以内でしたので、正直悔しさも。ただ、その悔しさが次のオリンピックこそはという新たな火種を心にともすきっかけにもなりました。」

目指すは世界陸上で8位以内入賞

今年は東京で世界陸上が開催されます。現時点でのご自身の目標をお聞かせください。
「まずは自己ベスト(61m75)を更新し、世界陸上の参加標準記録の64mを達成すること。そして東京が舞台となる今年の世界陸上で、今度こそ8位以内に入ることが目標です。シーズンインとなる4月までは地道にトレーニングを重ねて、大会でしっかりと結果を出し、会場となる国立競技場で多くの方々にビックスローをご覧いただけるように頑張りたいです。」

東京2025世界陸上には海外からも多くの方が観戦にいらっしゃいます。ぜひ、上田さんがおすすめする国内のスポットを教えてください。
「私が生まれ育ち、今も実家がある福岡県糸島市には機会があればぜひ足を運んでいただきたいです。糸島は福岡県の西部に位置する半島で、海と山に囲まれる豊かな自然が魅力。特に、立石山から望む景色は私の一番のお気に入り。
九州随一の繁華街、博多からも近く、海も山もショッピングも食も楽しめるのでぜひ観光にいらしてください。」

上田百寧
UEDA Momone
1999年、福岡県出身。陸上を始めた中学時代は短距離が専門。福岡県のタレント発掘事業で投てきの才能を見出され、中村学園女子高等学校(福岡市)で本格的にやり投げを始める。オレゴン2022世界陸上、ブダペスト2023世界陸上と2大会連続出場。オリンピック初出場となったパリ2024オリンピック競技大会では10位。自己ベストは61m75。世界ランキング17位(※2025年2月11日時点) 。

イベント・観光情報

日本で実施される国際大会情報や、スポーツを楽しめるスポット、アクティビティをご案内。
さまざまなスポーツを楽しむ旅をサポート。

SPORTING JAPAN

その他の関連サイト
旅行に関する情報