03/27/2025

競泳でデフリンピック2大会に出場し通算14個のメダルを獲得
– 藤原慧さん

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海外の競泳仲間に東京を案内したい

第23回夏季デフリンピック競技大会 サムスン2017と第24回夏季デフリンピック競技大会 ブラジル2021に競泳で出場し、1500m自由形でろう者世界新記録15分37秒64を樹立したほか、金メダル5個を含め、通算14個のメダルを獲得した藤原 慧さん。デフアスリートとして活躍された藤原さんに、デフリンピックとオリンピックの違いや東京2025デフリンピックに寄せる思いなどを語っていただきました。

競泳を通して自分の成長を実感

競泳はどんなことがきっかけで始めたのでしょうか。
「もともと藤原家では、泳げることが家族のルールみたいなところがあり、兄や姉も水泳を習っていました。僕は持病の喘息を克服するためにもと、親に勧められて小学校低学年からスクールに通い始めました。」

やはり最初から泳ぎは得意だったのですか?
「それが最初は泳ぐどころか、水に顔をつけるのも嫌で。水に慣れるところからのスタートでした。そこから、だんだんと泳げるようになり、次第に長く、速く泳げるようになるとそれが楽しくて。練習を重ねるごとに記録がどんどん伸びていき、自分が成長していく実感が持てることは、励みになりますよね。」

中学3年で出場した全国大会で7位となり、水泳の名門、日本大学豊山高等学校に進学されます。
「推薦の話を頂いたときは、水泳を思い切りやれるというのもそうなのですが、東京に行けるわくわく感が大きかったですね。それで意気揚々と上京したものの、入寮の初日からまったく食事が喉を通らなくて。あっという間にホームシックに。泣きながら実家に電話したことを覚えています。」

練習も大会も健常者と一緒

健常者と一緒に練習され、大会にも同じように出場されていたそうですね。
「聴覚障がい者の大会があるということを知らなかったというのもあり、小学生の頃から、当たり前に健常者の方と同じ条件で練習にも大会にも参加していました。自分の中では、ハンディを持ちながらも全力を尽くすことが使命だと感じていたというところもありました。」

実際、不自由されることも多かったのではないでしょうか。
「そうですね。まず、スタートのブザーが聞こえないので周りの選手の動きを見て飛び込みますし、最終ターンで鳴らされる鐘の音も聞こえないので、自分で今、どのくらい泳いだかも把握しなければなりません。あとは、試合で泳ぐ組ごとに招集がかかるのですが、自分がいつ呼ばれるか常に意識しているというのもありますね。そう考えると、泳ぐ以外のところで集中しなければならないというハンディは確かに大きいかもしれません。だからこそ、健常者と一緒に戦った全国大会で表彰台に上ったときは本当にうれしかったです。」

デフリンピックで実力を発揮

ハンディを抱えながら出場していた健常者の大会に比べると、デフリンピックでは泳ぎに集中できたのではないでしょうか。
「僕が初めてデフリンピックに出場したのは、サムスン2017大会だったのですが、その時に体験した“聞こえのサポート”はある意味、衝撃でした。例えば、スタートの合図は、音の代わりに目で見て分かるようにピカッと光るフラッシュランプが使われ、長距離の種目では最後のターンのときに鐘の代わりに水中にボードを入れて知らせてくれる。そうしたサポートのおかげで泳ぐことに全エネルギーを注ぐことができ、男子1500m自由形で世界新記録、男子400m自由形と男子400m個人メドレーはいずれも大会新記録を出すなど、予想を超える結果になりました。」

本来の実力を発揮できたというサムスン2017大会では、過去の記録を次々と塗り替え、3個の金メダルを含めて9個のメダルを獲得。ブラジル2021大会では2種目で金メダル、3種目で銀メダルを獲得するなど素晴らしい成績を収めました。今年は、いよいよデフリンピックが東京で開催されます。
「僕は、ブラジル2021大会後に引退したので、東京2025デフリンピックには出場しないのですが、電車や街の至る所でデフリンピックのポスターを目にすると、わくわくします。僕が出ていたらどうなるかな…なんて想像したりもしますが、思いは後輩たちに託し、彼らの活躍を楽しみにしています。今回、メダルのデザインもとてもすてきなんですよね。ぜひ、後輩たちには金メダルを目指して頑張ってもらいたいです。」

東京2025デフリンピックが楽しみ

デフリンピックという大会があることを初めて知る人も多いと思います。
「まずは大会を通して聴覚障がいについて知ってもらえることが一番のように感じます。音の代わりに光や文字などの視覚情報を用いて判断したり、手話を使って会話をしたり。聞こえない代わりにどんな工夫をしてコミュニケーションを図っているかを知ることができるよい機会にもなると思います。」

聴覚障がいのある方を身近に感じられる機会にもなりますよね。
「障がいがあるというと、ネガティブに捉えられがちなのですが、本人たちはとにかく明るくて前向きなんです。心にパワーを持っている方が多くて、僕も他の選手にお会いするたびにエネルギーをもらっているような気持ちになります。」

国際大会なだけに、海外の選手やスタッフ、そして観戦にいらっしゃる方も多いと思います。藤原さんの東京のおすすめスポットがあればぜひ教えてください。
「僕は大手町が好きです。東京駅や皇居がすぐ近くにあり、高層ビルが整然と立ち並ぶ街並みが“THE TOKYO”という感じで。道も真っすぐで広々としてきれいで、とても歩きやすいのも気に入っているポイントです。」

藤原さんは海外の選手とも交流があると聞きました。
「過去に出場したデフリンピックでアメリカやイタリア、アルゼンチンなどいろんな国の選手と仲良くなり、今もSNSでやりとりをしているんです。イタリア人の友達は僕がイタリアに行ったときにサンドウィッチがおいしくて有名なお店に連れていってくれて。パン好きの僕のために、リサーチしてくれていたようです。だから、今度の東京2025デフリンピックは、僕が海外の選手を案内する番。和食とお酒を気軽に楽しめる居酒屋にも一緒に行きたいなと。どこのお店にするかはこれからじっくりと考えます。そうした交流を持てるのもデフリンピックの魅力ですよね。僕なりに、東京2025デフリンピックを思い切り楽しもうと思います。」

藤原慧
FUJIHARA Satoi
1995年生まれ、島根県出身。乳幼児期の病気で中度難聴になる。小学校低学年のときに水泳を始め、中学3年で出場した全国中学水泳大会の400m自由形で7位入賞。2012年、2015年の2大会連続で出場したアジア太平洋ろう者競技大会では金8個を含む12個のメダルを獲得した。デフリンピックにはサムスン2017大会とブラジル2021大会に出場し、1500m自由形でろう者世界新記録15分37秒64を樹立したほか、金メダル5個を含め、通算14個のメダルを獲得。

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