02/20/2025

トライアスロンでオリンピック2大会連続出場-
高橋侑子さん

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自分の可能性に挑む3種目の総合競技

スイム(水泳)・バイク(自転車)・ラン(長距離走)の3種目を連続して行うトライアスロン。過酷な競技として知られるトライアスロンで、世界を舞台に活躍しているのが高橋侑子さんです。オリンピックは東京2020オリンピック競技大会、パリ2024オリンピック競技大会と2大会連続出場、日本トライアスロン選手権では4度の優勝を果たした高橋さんに、競技の魅力とともに今後の目標や東京のおすすめスポットなどを伺いました。

高校1年で日本代表に初選出

トライアスロンの大会に初めて出場したのは小学生の時だそうですね。
「はい。トライアスロンを趣味にしていた父の影響で、幼い頃から、見よう見まねで兄や妹と一緒に、走って、泳いで、自転車に乗って競い合っていました。初めて大会に出場したのは小学2年生のときです。レースが開催される地域に家族みんなで出かけて、競技というよりは旅行気分で楽しんでいるところがありました。」

中学3年でトライアスロンの全国大会で優勝したことを機に、トライアスリートとしての道を歩まれます。
「実は、小学校では競泳、中学では陸上部に所属し、個々の競技で頑張っていたのですが成績が思うように伸びなくて。それが、トライアスロンの大会で1位になったことで、表彰台に立つ喜びと達成感を味わうことができました。しかも、高校1年の春にはジュニア日本代表としてアジア選手権に選出され、初めて世界の舞台に立つことに。頑張れば、もっと上を目指せる。そう思ったときから、オリンピックを目標に掲げ、挑戦する決意をしました。」

“完走した人、全てが勝者”

高橋さんが感じるトライアスロンの魅力を教えてください。
「トライアスロンは“過酷”というイメージを持たれがちなのですが、3種目の総合競技だからこその“可能性”を私はいつも感じています。例えば、スイムからバイク、バイクからランへと切り替えるときのロスを少なくする工夫をすることでタイムを縮めることができたり、集団になったときの駆け引きで順位を上げたりもできる。種目が複数で距離も長いからこそ、上位を目指せる可能性は広がります。観戦していても、選手ごとの戦略や、それによる順位の変動、バイクのスピード感、最後まで諦めない選手たちの奮闘など、レース全体を通して目が離せなくなります。」

大会によって、距離もコースも違うのですよね。
「距離で一般的なのは、スイム1.5km、バイク40km、ラン10kmのオリンピックディスタンス。それよりも短い距離の大会もあれば、長い距離の大会もあります。コースに至ってはスイムだけでも、海だったり、川だったり、湖だったり。バイクやランのコースも大会によってさまざまで、それこそ天候によってコンディションもがらりと変わります。それだけ奥が深く、完走した時の達成感と充実感は他の競技では味わえないものがあります。『完走した人、全てが勝者』とたたえられるのも、トライアスロンという競技ならではだと思います。」

自分が納得できるまで競技を続けたい

高橋さんは2017年から海外に拠点を移されています。どんな背景があったのでしょうか。
「大学時代、日本学生選手権の4連覇など実績を残したものの、リオデジャネイロ2016オリンピック競技大会への出場はかないませんでした。そこで痛感したのは国内と海外の実力差。自分をもっと成長させたい。そんな思いから、アメリカに渡り、海外のチームに参加することを決めました。もちろん最初は言葉も生活も全てが不自由で苦労もしました。けれどそのおかげで心も体もすっかりタフに。何より、同じ舞台で競い合う仲間とたわいない会話で笑い合い、今もお世話になっているパウロ・ソウザコーチからは自ら進んで練習を楽しみ、継続することの大切さを教わったことで、トライアスロンという競技をさらに好きになることができたんです。」

ソウザコーチの下で実力を伸ばし、アジア選手権では女子個人、混合リレーの両種目で計4つの金メダルを獲得。目標にしていたオリンピックは東京2020大会、パリ2024大会と2大会連続出場を果たしました。
「パリ2024大会は自分の集大成として臨んだものの、思うような結果を残すことができませんでした。自分も30代となり、活躍の場は後輩たちに譲るべきなのかもと考え、大会後すぐに、ソウザコーチに引退の意思を伝えました。すると、とっても寂しそうな顔をして、『そうか、そう思った気持ちも分かるけど、競技を終えて何をやりたいんだ?まだこの決断を出すのは早いんじゃないか?まだやりたいことがはっきり決まっていないなら競技をやりながらでもこれからのことを考えられるんじゃないか?』と声をかけてくださいました。
たしかにそう。引退後にやりたいことがあるわけでもない。自分でもオリンピックの結果に満足しているわけではない。だったら、もう少し競技を続けてみようと思い直すことができました。」

JOCアスリート委員としても活躍

そして2024年11月に開催された日本トライアスロン選手権では2年連続4度目の優勝を飾り、国内での存在感を知らしめました。
「日本選手権は、ソウザコーチの下で共に練習に励む仲間たちからも刺激を受け、気持ちを切り替えてレースに挑むことができました。自分にはまだ可能性がある。そう思わせてくれるのがやっぱりトライアスロンのよさですね。コーチの言う通り、自分が納得できるところまでやり切る。その姿を後輩に見せることが、自分が今、すべきこと、できることなのかもしれません。」

JOCアスリート委員に新たに選出され、今後は競技以外でも活躍の場が広がりそうですね。
「トライアスロンは国として、まだオリンピックではメダルが取れていないだけに、私たち選手の強化を含めて、競技の発展、普及に尽力し、トライアスロンの魅力を広めていくことも自分の使命と思っています。個人的には、JOCアスリート委員になったことで、他競技の選手の皆さんとのつながりが増えるのも楽しみの一つです。日本のスポーツ界、トライアスロン界に少しでも貢献できるように精進したいと思っています。」

現在、海外を拠点に活動しながら、年に数回は実家のある東京に帰省されるとのこと。高橋さんがおすすめする都内のスポットをぜひ教えてください。
「おすすめしたい場所はたくさんあるのですが、トライアスリートとして言うならば、東京2020大会でトライアスロンの会場にもなったお台場でしょうか。さまざまなマリンスポーツが楽しめるビーチや最新のエンターテインメントが楽しめる大型ショッピングモールもあり、東京にいながらリゾート気分を味わえるスポットです。」

高橋侑子
TAKAHASHI Yuko
1991年生まれ、東京都出身。小学2年からトライアスロンの大会に出場。法政大学では日本学生選手権で4連覇。2017年から海外に練習拠点を移して強化に取り組み、アジア競技会は、2018年パレンバン、2023年杭州と2大会連続で女子個人、混合リレーの両種目連覇を達成。オリンピックは東京2020大会、パリ2024大会と2大会連続出場。日本トライアスロン選手権は2018年、2019年、2023年、2024年と4度優勝。アメリカやヨーロッパ各国を拠点に転戦しながらトライアスリートとして活躍。