世界最高の夢舞台・マスターズへの切符をかけた第15回アジアパシフィックアマチュア選手権が2024年10月3日~6日の日程で太平洋クラブ御殿場コースにて開催されました。昨年の大会で日本勢最上位につけたのが、2022年のABEMAツアー「ダンロップフェニックストーナメントチャレンジinふくしま」でのアマチュア優勝経験を持つ山下勝将さん。8月のPGA資格認定プロテストで見事トップ合格するなど、今後の活躍に期待がかかる山下さんにゴルフの魅力を語っていただきました。
山下さんはいつ頃ゴルフを始められたのでしょう。
「1歳上の姉(女子プロゴルファーの山下美夢有さん)がゴルフをやり始めたのは5歳だったのですが、その頃僕が習っていたのは空手と柔道。幼い頃は泣き虫で、それを心配した親がまずは心と体を鍛えなければと3歳くらいから道場に通わされていました。僕が初めてゴルフに触れたのは小学5年生のとき。父と姉と一緒に練習場に行ったのが最初でした。床に置いてある球をクラブで打つだけ…と思っていたのですが、これがまったく当たらず、最初は空振りばかりでした。でも、何度かやっているうちにポーンと気持ちよく当たるようになったんです。それが楽しくて。そこから一気にゴルフにのめり込んでいきました。」
ゴルフの魅力や醍醐味はどんなところにあると思いますか。
「ゴルフは審判がいないスポーツなんですよね。ルールも全て頭に入れて、自分の判断でプレイを進めていく究極の個人競技。戦う相手が自然というのも大きな特徴かもしれません。芝の生え具合や風や雨といった天候、コース上の木もそうですよね。コースもさまざまで、その時々によってコンディションがまったく違う。そうした状況の中で、常に自己判断で球を打っていくわけですが、その一打だって思うように飛ぶわけではない。常にいろんなことと戦い、向き合いながら克服していくところが難しいところであり、醍醐味でもあると思います。観戦する側としては、選手それぞれに得意とすることが違うので、同じコースをどう攻略するかなどは見ていて面白いですし、自分のプレイのヒントになることも多いのではないでしょうか。」
現在、近畿大学の4年生。プロを目指すに当たり、大学のゴルフ部に入るのにはどんな理由があったのでしょう。
「一緒に高みを目指せる仲間に出会うこと、そして、チームで活動することはきっと自分の今後に役立つはずと思い、関西の強豪といわれる近畿大学への進学を決めました。実際、仲間にも恵まれ、自分のした選択に間違いはありませんでした。特に、同期の存在は大きいですね。僕は現在、副主将を務めているのですが、主将の城野(寛登さん)とは入学当初から『おまえには負けないからな』と言い合える間柄。大学に入る前の自分はストイックさや継続性に欠けるところがあったので、むしろ、自分に火をつけてくれることがありがたかったです。」
そうした仲間と、令和4年度関西学生男子秋季1部校学校対抗戦では団体優勝を勝ち取りました。
「当時から活躍されていた平田憲聖さんや宇喜多飛翔さんもいらっしゃった常勝チームの大阪学院大学さんと接戦の末に勝っての優勝ですから、最後はみんなで抱き合って喜びました。個人戦では優勝経験がありますが、団体戦での優勝はそれにも勝るうれしさで、もう、感動しました。」
勝った喜びはもちろんのこと、ご自身にとってプラスになったことも多いのではないでしょうか。
「そうですね。僕は1回生のときから団体戦に出場させてもらっていたのですが、その裏では出場できずに悔しい思いをしているメンバーもいるわけです。でも、誰一人として悔しさを表に出すことなく、仲間をフォローし、心から応援してくれる。その思いと行動が本当にありがたくて。彼らのためにもコースでプレイできる自分たちは絶対に結果を出さなくてはと本気になれたんです。先ほど、ゴルフは究極の個人競技とお話ししましたが、そのゴルフで、みんなと心を一つにして勝利を目指せることができた。人の思いを背負って戦うことの尊さ。この経験を得られたことは自分にとってかけがえのない財産です。」
個人で優勝し、団体でも優勝し、満を持して臨んだPGA資格認定プロテストで見事トップ合格を果たされました。
「初めて挑んだプロテストだっただけに最初は緊張してしまって。二次プロテストの段階では思うようなスコアが出せていなかったんです。そこで、自分で自分を追い込んだらあかんと、空を見上げて深呼吸をしたら、すっと肩の力が抜けて。スコアも安定してきて、ファイナルでは力むことなく自然体でプレイすることができました。大学に入学してからの4年間で、自信とメンタルの強さが身に付きました。」
その象徴とも言えるのが、初日から首位を守る完全優勝で、下部ツアー史上7人目となるアマチュア優勝を遂げた2022年のABEMAツアー「ダンロップフェニックストーナメントチャレンジinふくしま」ですね。
「あの大会は特に印象深いです。2打差でトップに立って迎えた最終18番で、前の組で回っているハン・リーさんにイーグルで並ばれて。僕は最終パー5を残し、Tショットを打ったら真ん中のバンカーに入っちゃって。運命の2打目。アゴが高いバンカーでラインも微妙なため、刻んでバーディを取りに行くのが正攻法といえる中で、あえて思い切って狙いにいこうと。それがスーパーショットになって、結果イーグルを取り、2打差で優勝。最後まで守りに入らず、思い切って打って勝ち取ったことがその後の自信につながりました。」
自分に自信を持ち、メンタルも鍛え、これからプロとしての活躍に期待がかかりますね。自身はどんなプレイヤーを目指されているのでしょうか。
「僕は、どちらかというと淡々とプレイするタイプ。冷静さの中にも、みんなを驚かせるようなプレイで人々を魅了するプレイヤーになるのが目標です。例えるなら、タイガー・ウッズさん。トラブルショットを打ったと思わせておきながら、次のショットで思い切り寄せてきたり、あり得ない位置から入れてきたり。とにかく想像を超えるショットを打ってくる。そうした見る人をドキドキワクワクさせるプレイヤーに自分もなりたいです。この先、何より心強いのは、大学で切磋琢磨し合ってきた城野もプロテストに合格したこと。これからも同年代の仲間とともにプロの道を歩めることも楽しみです。」
今年は日本でアジアパシフィックアマチュア選手権が開催されました。この大会の魅力を教えていただけますか。
「過去には松山英樹さんも優勝された由緒ある大会で、優勝者はマスターズトーナメントや全英オープンの出場権を獲得できるなど、世界最高の夢舞台に直結する大会です。僕は今年は出場していないのですが、新たなスター選手が誕生する大会でもあるので、ぜひ今後も注目してご覧ください。」
山下さんがおすすめする日本国内のゴルフ場を教えてください。
「まずは兵庫県三木市にある廣野ゴルフ倶楽部でしょうか。1932年に開場した歴史あるゴルフクラブで土質、地形、景観、戦略性などどれをとっても素晴らしく、世界的なコースとしての評価が高い名門コースです。ほかには、兵庫県神戸市にあり、僕が父や姉とよく回っている六甲国際ゴルフ倶楽部もおすすめです。自然の地形をうまく生かした変化に富んだコースデザインが特徴で、多彩なテクニックとボールコントロールを要求されるのでプレイのしがいがあります。日本のコースはどこも自然に囲まれて表情豊か。世界的評価の高いコースも各地に点在しているので、ぜひ、いろんな地域で日本ならではのゴルフツーリズムを楽しまれてください。」
山下勝将
YAMASHITA Masayuki
2002年、大阪府出身。女子プロゴルファーの姉、山下美夢有さんの影響を受け、10歳のときにゴルフを始める。大阪桐蔭高等学校を経て、現在、近畿大学4年生。2022年にABEMAツアー「ダンロップフェニックストーナメントチャレンジinふくしま」で史上7人目のアマチュア優勝を果たす。2024年度のアマチュア日本代表(ナショナルチーム) メンバーに選出。2024年8月、PGA資格認定プロテストで見事トップ合格。2025年からはプロゴルファーとして新たな一歩を踏み出す。